パリ7区の完成な地区に’Galerie ARCK’ はある。ここのオーナーのAさんとのお付き合いは8年になる。パリに越したばかりで、仕事が無かった時に、彼女が作っていた協会誌のデザインをさせていただいたのがきっかけ。今だから暴露できますが、当時はDTPの知識など全くなかったです。最初の1冊は、日本から持ってきたPowerMac1台で何とか完成させた。仏語のレイアウトなども初めてだった。
日仏の無名の作家たちの作品を紹介する、LePont(橋)という協会誌で、文字通り、日仏の文化の橋渡しをする目的で作られていた。ただ、読んで、見て面白いかというと疑問だった。デザイナーの立場から、誌面を賑やかにする提案をしてきましたが、彼女の目的はそんな陳腐なことではなく、メディアには乗らないような、隠れた作家や芸術家の発表の場を作る事でした。実際に現場に行って、インタビューをしたり、写真を撮ったりと交流を深める中で、じんわり、彼女の思想に触れることができ、毎回の仕事をとても刺激的に取り組ませていただいた。
「10年パリで好きな事やったら、日本に帰ろうと思うんですよ」と言っていたのを思い出します。今夜ここに並んだ作品で、ここのギャラリーも最後を締めくくる。彼女から学んだ芸術的思想は’品’というあり方。