巨岩と花びら 船越保武 随筆集
この「女性」というよりも、「少女」と呼ぶにふさわしいであろう彫刻を見た時の驚きを今でも覚えている。
「生きてるみたいーっ!」てな風に書くとあまりにも低俗で幼稚な表現になってしまうが、、、
元々は大きな石の塊だったのに、まるでこの少女の性格やその記憶までが掘り出されている感じがして、感動して怖かった。
そのような「彫刻」という技術に改めて感動した。
この少女は、ローラという当時15歳のスペイン人の女の子。
船越さんがスペインの彼女の家族の家を訪れたこと。
ローラと、そのお姉さんのこと。
快活な性格やその笑顔をスケッチで描き留めたり、船越さんの目に焼き付けたりしたことが、この随筆集にはつらつらと連なっている。
あとは、川釣りのことや、山の花々や、もちろん格闘した作品のことも連なっていく。
彫刻にも色々あり、粘土のように、中心から外へ足し算をしながら、ねじり上げながら造型する方法もあるし、逆に石や木などのように、外から中心へ削ぎ落としながら、形を探求することもある。
船越さんは石を削りながら、15歳の初々しい少女の「心」を探し求めた。
「心」、「生命」、「いのち」、見えないけれど、厳然と生き生きと生きているそれを石に定着させる。
そして、それは私たちの人生よりも長く、100年も、もしかしたら1000年も以上、そこに生き生きと生きることができる。
すごい技術だと思う。
それが随筆「巨岩と花びら」の対比で描かれます。
彫刻家 船越保武さんは、同じく彫刻家の舟越桂さんのお父さんです。
透明感のある目の表現などが似てますね、どちらがどちらにという訳ではなく。
お釈迦さんに似せて作ったと思われる仏像も、「仏陀」と呼ばれる、ダイナミックな生命や心の状態を追い求め石を掘ったと考えられる。
程度の違いはあれど、偶像崇拝も像ではなく心を対象にしていたのかもしれない。