パリ郊外のDさんの自宅には、小さな録音スタジオがある。
グランドピアノが置かれて、他に2つの個室がある。3人で演奏しても、それぞれ完全に別トラックとして録音できるようになっている。例えば、ドラムとベースとピアノとかが一緒に演奏しても、それぞれのマイクには他の音が入ってこない設備になっている。
彼はジャズのピアニストですが、今回は彼が思春期に聴いてきたロック、ファンク、ゴスペル、フュージョンなどを取り上げた楽曲です。その録音のために、昔の珍しいオルガンや電子キーボードが所狭しと置いてある。
トランペット、エレクトロニックベース、ドラムが録音され、ギターは日本で演奏されて、つい先日送られてきた。
午後に4人が集まり、これまで録音してきた曲を、一つ一つ聴いては、意見を述べ合い、最終的な修正を行った。
だいたいフランス人はこのような場にあっても名刺交換とはしないので、誰が何をしているのか判らない。
でも、僕のとなりにいるFさんが一番好き勝手に喋っているし、全ての曲に対して厳しい意見を連発している。何曲かは抹消された(笑)
なので、たぶん偉い人で、プロデューサーか何かかなと思う。
リフェレンスとしている過去の音楽もほとんど頭に入っている音楽百科事典みたいな人だ。
その隣のRさんは少し若く、大体が「いいね!」くらいで肯定的。曲の順番をいつも気にしていて、全体感をみている。
必ず全員が意見するのだが、残念ながら、僕のフランス語は、音に対してそんなに表現を持ち合わせていない。
そして、僕が座った椅子がキーキーいうので、なかなかリラックスして聴いていられない(笑)。
彼の家には、僕が彼らのコンサートのために描いたポスターが額装されている。
ポスターにはその時に演奏した福島の中学校の吹奏楽部の子たちの寄せ書きがあった。
なんだかジーンときた。いつもより絵が大きく見えたよ。
※当日の演奏はこちらから見れます。
Dさんは、このコンサート以来、とてもポジティブな態度で作品作りをしているそうだ。
今回のメインテーマになる曲がそれを示し、僕らに希望を与えているように思う。
そして、フランス人は大体が帰り際に名乗り合う。
結局、好き勝手言っていた百科事典さんは、フランスジャズ協会の会長さんだそうだ。
どうりでジャズに厳しい。